三人打ちフリー雀荘メンバーのぼやき③
20000――これはなにを表す数字だろうか。
これは、とある月の僕の給料である。
高校生のアルバイトかな? と思った方もいるだろう。
夕方の6時~9時までのシフトで、週2日ペースなら、だいたいこんなところだろう。
850円×3h×8日=20400。まぁ、妥当なところである。
ではひとつ、その月の僕のシフト日数をご覧いただこう。
週5日の出勤である。すなわち、
X×Y×20=20000
ここにおけるXは時給。Yは平均労働時間である。
ここで、僕の平均労働時間を紹介しておく。
日によってまちまちだが、だいたい10時間程度であろうか。
それじゃ、Yに10を代入。すると、
X×10×20=20000
さて、Xはいくらか。中学生にもできる簡単な方程式である。
答えは
X=100
僕の時給は100円であった。
そんな訳あるか!
どの都道府県においても、最低賃金は650円を上回っている!
お説ごもっとも。が、悲しいけれど、これが現実なのよね。
週5出勤で、平均10時間働いて、月の給料が20000円。
悲しすぎて、もはや涙も出てこない。
20000円なんて、携帯代を支払って、1日2食食べるだけで足が出る。
馬鹿にするのもたいがいにしろ。
もう一度いうが、これが現実なのよね。
メンバーの給料と雀力
メンバーとは、かくもクソ低賃金で労働させられる月も、なきにしもあらずだ。
むろん、毎月毎月、このようなことになる訳ではなく、
やはり麻雀の収支次第といったところ。
月手取りで30万という月もなくはないが、そんなものはごくまれで、
ほとんどの月において、メンバーというのは月間の麻雀収支はマイナスだ。
そのマイナスをいかに抑えるか、
がメンバーの腕の見せ所といっても過言ではない。
というのも、これにはやむにやまれぬ事情がある。
そのメンバーの麻雀の腕がへたっぴだとか上手だとか、
そういう話よりも、ひとつ上の次元で。
まず大前提として、メンバーは、フリーでお客様が不足していたら、
必ずひとりのプレイヤーとして参加しなければならない。
そこに意思の介在する余地はなく、泣こうが喚こうが、入らねばならない。
例えば、その日は体調が優れず、集中力を発揮できないような状態でも、
麻雀を打たなければならないし、
そういう日は往々にして、ケアレスミスなどが頻発して、ロクな結果にならない。
反対に、いくら麻雀を打ちたかろうが、場合によっては打てない時もある。
フリー客がひとりもおらず、卓が立たないような状況か、
もしくはメンバーが入らなくても、卓が成立するような状況
(=この状態を「まる」で回っているという)。
だから、本走序盤は調子が悪く、後半で復調の兆しが見えてきたとしても、
そこで客にやめると言われてしまえば、もうどうしようもない。
これがひとつ目の理由。
メンバーの給料とゲーム代
そしてもうひとつ。それは、メンバーもまたゲーム代を徴収されてしまうということだ。
三人打ちフリー雀荘のメンバーの平均本走半荘数は、
だいたい200~300本。400本となれば、かなり打つ方だろう。
この打った(あるいは、打たされた?)半荘のゲーム代も、もちろんそのメンバーの懐から出る。
大阪市内の0.5レートの雀荘のゲーム代は、大体1000円なので、3半荘で3000円――
つまり、3半荘でひとりあたり1000円の負担となる。
仮に300本打てば、それだけで100000円を給料から捻出しているのだ。
給料が20万円あったとしても、その半分はゲーム代へと消えていく。
麻雀の勝ち負け以前の問題である。
三人打ちは、だいたい一時間に3半荘くらいは消化するから、
本走中は、時速マイナス1000円でメンバーの給料が減っていく。
ん、ちょっと待てよ。
もしもこのメンバーの給料が時給1000円としよう。
そうした場合、このメンバーが本走している最中に発生している給料は、差し引きいくらになるだろうか。
1000円–1000円=0円/時。
そう、麻雀を打っている間は、実質給料が発生していないようなものなのだ。
ところで、最近の雀荘業界では、ゲームバックという救済措置がある。
これは、打った半荘数に応じて手当が付くというもので、
多くはハーフバック……3半荘あたり500円返ってくる。
フルバックというのも、一部の店舗ではあるが、
まぁ、ほとんど一部と言っていいだろう。
このゲームバック手当の部分は、求人広告に掲載されていることはないので、
もしもこれからメンバーをしてみたいという人は、
ぜひとも一度尋ねてみるのがいいだろう。
そもそも、ゲームバックというものがない店すら、いまだに存在する。
とはいえ、それでもようやく時給500円になる程度。
ふつうにコンビニバイトした方が、よほど割は良い。
しかも、負けて給料が減るリスクもないのだから。