完全先付けと後付け
麻雀を遊ぶ上で、細かなルールの違いというのは、店舗ごとに、あるいはセットごとに存在する。
点数計算ひとつとっても、4翻30符を、7700とするか、8000とするかで異なることもあるし、
赤の枚数やツモと平和の複合の有無、喰いタンは可か不可かという違いもある。
特に、関西ルールを源流としている大阪式三人麻雀は、現在主流の関東ルールとは異なるところが多い。
今回は、その中でも、完全先付との話をしていきたいと思う。
後付けとは?
大阪式三人麻雀の代表的なルールといえば、「全赤抜きドラ 完先喰いタンナシ」というものだろう。
まるで呪文のような言葉の並びだが、ひとつずつ取り出していけば、
五筒・五索がすべて赤ドラで、北もしくは華を抜きドラとして採用し、
そして「完全先付」で喰いタンなし、という訳だ。
その内、前者ふたつはわかりやすい。要するにドラがたくさんあるということだ。
そして、喰いタンなしも難しい話ではなく、ただ単に喰いタンを役として認めていないということ。
では、「完全先付」とはいったいなんなのか。
この先付というものを説明する前に、まず後付について説明しよう。
例えば、
例1)
という手牌があったとして、
他家の切ったをポンして、しかる後にを鳴いた時、
この時の牌姿は、
となり、
手役は「役牌(白)」になるのだが、一度目の鳴きの①ポンではまだ役が確定していない。
後から鳴いた、白の明刻で役が確定した訳だから、「後付」という。※1
また、
例2)
という形で、白で出和了ることもまた同様だ。
ポンの時点では、まだ役が確定していない。
ほかにも、
例3)
という聴牌形があったとして、
この時、で出和了することもまた、「後付」という。
手牌の形だけでは、まだ和了役が確定していないために、そう呼ばれる。
いわゆる「片アガリ」というものだ。
注:ツモ和了した時は、門前清自摸和という役が確定しているので、「後付」にはならない。
どちらも、現在主流の四人麻雀においては、一般的に許可されているルールで、
むしろこれを利用して、一見喰いタン仕掛けのようだが、役牌の後付で和了を狙う、などの戦術も存在している。
完全先付けとは?
さてでは、後付の説明を終えたところで、いざ、先付とはなんぞや。
上述の説明に従って、「先に役を確定させてなければならない」ということだ。
すなわち、
例4)
という形から、先に白を仕掛けて、4-7で和了るのは、「先付」だ。
ちなみに、
例5)(※西はオタ風)
の形から、をポンして、、もしくはで和了るのはどうか。
これも「先付」だ。当たり前ではあるが、混一色の手役がをポンした時点で確定している。
では、次の例はどうか。
例6)
の形から、で出和了りしたとする。
一見、なんの問題もないように思える。
が、真実は、和了の時点では、まだ一気通貫は確定していないのだ。
なぜなら、出和了で完成させた面子は、「後から確定させた面子」という扱いになるのだ。
これを、「中付」と言って、二副露目で役を完成させた場合にこのような裁定が生じる。
ツモ和了りした場合もまた同様で、「後付」の裁定が下される。
要約すると、「完全先付」ルールとは、一副露目の時点で、すでに手役の中で完全に役が完成しきっていなければならない、という非常に厳しいルールなのだ。
そのため、
例7)
というような面前聴牌で、を出和了したとする。
現行主流のルールでは、平和ジュンチャンの複合が認められるが、
完全先付ルール下では、この時点ではジュンチャンは確定していないので、平和のみが手役として認められるという訳だ。
まとめ
と、まぁ、「完全先付」の裁定について、いろいろこまごまと説明したが、
実際、これほどまでに厳密にルールを遵守しているところなど、ほとんど存在しないといってもいい。
例えば、完全先付喰いタンナシルールを掲げている、大阪の三人打ちフリー雀荘などでも、
例6のような中付一気通貫を認めているところもある。
後付でさえなければよい、というようなアバウトなところさえある。
そもそも、この完全先付ルールというもの自体が、時代遅れめいているところはなきにしもあらずで、
麻雀というものがメディアを通じて、エンターテイメントのひとつとして世間の日の目をみているこのご時世、
ゲームスピードを落とすような裁定は、敬遠されがちなのだろう。
さらに、フリー雀荘経営者の観点から見ても、売上効率を落とすことから、このルールはやはり敵視されるだろう。
もはや化石と化した完全先付ルールではあるが、やってみれば、これはこれで面白い。
筆者も一度友人たちとセットで試してみたが、ふだんと勝手が違って、てんやわんやした。
いつもと違うルールで麻雀をすることで、新たな魅力に気づくことができるかもしれない。
とはいえ、ほとんど配牌勝負になることも否めないのだが……。