雀荘メンバーの三人打ち戦術③
メンバー――すなわち雀荘の従業員の仕事は、「麻雀を打つこと」ではなく、
いかに「卓を回し続けるか」である、とは、以前にも述べた通りだが、
雀荘のメンバーというのも、結局はただの接客・サービス業の店員だということも忘れてはならない。
あくまで本走というのは、どうしても卓が立てられない時の応急処置であり、
卓がまるで回るに越したことはないし、本来的にはフリー客やセット客のお世話に従事するべきなのだ。
とはいっても、どうしても麻雀を打たねばならない時も、やはり存在する。
が、そんな場合も、諦めの境地で本走に入る訳ではなく、
麻雀の片手間に、誰かほかのお客様を店に呼ぶ手配を心掛けるべきだ。
前回の記事では、本走で強くなるためには「客から甘く見られてはいけない」と書いたが、
今回は、その方法について管見の限りで述べていこうと思う。
7.客の意見には「YES」で答えよう
みなさんは、「イエスマン」という映画をご存じだろうか。
これは、今まではあらゆる事柄に対して「ノー」で応えて来たある男が、
どんな時でも「イエス」と答える、というルールを自分に課したことによって巻き起こるコメディ映画なのだが、
まぁ、そんなこととは関係なく、人間だれしも、やはり自分の意見を肯定してもらえれば嬉しいものだ。
そして、そのイエスマンには好印象を抱きがちだろう。
例えば、雀荘で立ち番をしている時にはよくある一場面だが、
その店では後ろ見は禁止ではなく、客同士でも後ろ見をしあって、あれこれ議論することもある。
その男性はお世辞にも麻雀が上手いと言える訳ではなく、
特に局中盤以降で、手牌を目いっぱいに広げがちで、そのせいで放銃率が高かった。
その一局も同様で、あなたが打っていれば、先に処理していたような牌を聴牌まで引っ張って、
追っかけリーチ宣言時に、先制リーチ者に放銃し、ハコ割れしてしまった。
そして、あなたが後ろ見していることに気が付いていたため、くるりを振り返って、
「あれで放銃したら、仕方ないよな」と、悔しそうに言った。
こんな時、あなたが掛けるべき言葉は、なにがふさわしいだろうか。
あなたの視点、思考からすれば、仕方ない放銃、という訳ではけしてない。
だから、「あそこで〇〇を先切りしておけば~」と正論をぶつけるべきか、
あるいは、「いえいえまったくおっしゃる通りです」とイエスマンになりきるか。
答えは、後者である。仮に明らかな牌効率のミスがあったとしても、せめて曖昧な笑顔を浮かべて頷いておくのだ。
反対に、どう見たって仕方のない和了り逃しをしている人が、いつまでもそのことについて悔しがっている場合なんかは、
そっと「仕方ないですよ」と寄り添ってあげれば、ぐっと客からの心象はよくなるだろう。
要するに、客の機嫌を損ねない言動を心掛けるべきなのだ。
仮にあなたの言葉が、反対のしようのない正論だったとしても、
やはり自分の意見や考えを否定された相手は、良い気持ちにはならないだろう。
8.親番では絶対にリーチ!
さて、まずは以下の手牌を見てもらおう。
ドラ:
こんな手牌で1向聴しているところに、他家から1枚目のが切られた。
これを鳴くか鳴かないか、の判断だ。鳴けば、役牌ドラ1:4000点の聴牌だ。
もちろん、点棒状況や場況などの様々な要素を考慮して判断するべきだが、
あらゆる状況で、この役牌を仕掛けているようでは、他家に恐れられるプレイヤーにはなれないだろう。
やはり三人打ちにおいて、最も怖いのは親のリーチだ。
それをいかに聴牌だからといって、早々に捨て去るのはもったいない。
では続いて、以下のような場面はどうだろうか。
ドラ:
というような手牌で10巡目、子から先制リーチが入っている局面で、が河に放たれた。
これを鳴くかどうかの判断。鳴けば、役牌ドラドラ:6000点の聴牌だ。
これもやはりスルー推奨だ。受け入れ枚数はかなり多く、
もしもが入れば、––の3面張でリーチをかけることができる。
仮にそれまでに通っていない中張牌などを引いてきたとしても、知らん顔してツモ切りだ。
相手の待ちなど推測する必要もない。
もしかすると、相手は愚形カンチャンでリーチをかけているかもしれない。
そうだった場合、親に全ツッパされるのは、ただただ恐怖でしかない。
それで、「こいつが親で和了る時は打点が高いからなぁ」とでも思ってもらえれば、しめたものだ。
あなたの親番の時に、軽々に仕掛けてくるようなプレイングはしてこないだろう。
9.挨拶は欠かさずに!
毎日のように顔を見せてくれるお客さん、あるいは、一か月に一度くらい足を運ぶお客さん、
もしくは、半年に一回必ずやってくるお客さん……雀荘の客にも、様々な人たちがいる。
彼らが店に麻雀を打ちに来てくれた時には、待機時間の間になるべく話しかけよう。
話の内容はなんでもいい。仕事の話、麻雀の話、あるいは趣味の話……。
ごく短時間でも構わないので、とにかく、店に来てくれた時には、必ず会話をしよう。
そのお客さんがすぐに麻雀に入ることになっても、局と局の合間に、少しでも話しかけるのだ。
一方で、自分が本走中に他のお客様に話しかけるのは控えた方がいい。
やはり本走中は麻雀に集中するべきで、仮に同卓者が話しかけてきても、応対のみで済ますのが無難だろう。
最後に、もう一度言うが、雀荘のメンバーといえど、本質的には、接客業に違いない。
そこのところが、意外と抜けているメンバーも少なくない。
お客様の上機嫌のために、手を抜いたり、見逃したりした方がいい、と言っている訳ではけしてない。
麻雀「以外」の部分で嫌われてしまうのは、もったいない、という訳だ。