三人打ちと地域性
三人打ちとは、地域性の強いローカルな競技であることは、折に触れて何度も言ってきたが、
それは赤の枚数やご祝儀比率、ルールに限った話ではない。
今回は、マナー面について、三人打ちの秘密と魅力をお伝えしていこうと思う。
1.チェーン店のマナー
さて、ところで、四人打ちにおけるマナーやエチケットというのは、現在、かなり統一化されていっていると思う。
というのも、ニコニコ生放送によるプロ団体の対局配信や、
麻雀プロによる健康麻雀や麻雀教室が各所で催されているからだ。
どのプロ団体も、わずかな差異こそあれど、マナーやエチケットについては共通している。
だから、その観客や受講者もまた、そのマナーやエチケットを正統のものとして受け取る訳だ。
が、三人打ちとなると話は違う。
現在、三人打ちの対局番組といえば、雀サクッから配信されている鳳凰杯くらいのもので、
それについてもルールこそ明文化されているものの、マナーについてはあまり深く触れていない。
例えば、大阪府大阪市内某所の大型チェーン雀荘にあなたが足を運んだとして、
そこでは、四人打ちのマナーをそのまま流用されていることが多い。
- 強打厳禁
- 引きヅモ禁止
- 片手倒牌禁止
- 膝を立てるのはもちろん、足を組むのもダメ
- 点棒の受け渡しは丁寧に
- 同卓者との会話はできる限り慎みましょう
- などなど、……
これを破った場合は、はじめの内は店員から優しく注意されるだけで済むが、
次第に勧告になり、最後には警告となる。
2.都会のお店のマナー
あるいは、都会の雀荘へ少し足を伸ばしてみよう。
都会といえば、大阪は梅田、東京は新宿、愛知は名古屋、福岡は福岡……そのあたりだろう。
このあたりには、有名チェーン店なども数多く出店しており、基本的には1と同様のエチケットが要求される。
客層ももちろん、それを了解したプレイヤーばかりで、それを乱そうものなら、
すぐにでも怪訝そうな視線が飛んでくる。
3.片田舎のお店のマナー
一方で、それら都会、主要駅から電車で30分ほど移動した場合、どうなるだろうか。
これが不思議なもので、がらりと変わる。
例えば、大阪梅田駅から、大阪市営地下鉄御堂筋線を使って30分ほど行けば、堺市へたどり着く。
堺といえば、貿易と刃物の町。仁徳天皇陵があることで有名だが、
この堺市で、雀荘を見つけてふらりと扉を開けば、まず気づくのは、客層の違いだ。
梅田では、スーツを来たサラリーマン風の30代、40代も少なくないが、
このあたりまでくれば、スーツなどまずお目にかかれない。
そして続いて、店内のボリュームが違う。
店内BGMの音量を言っているのではなく、客の立てる音の大きさが、明らかに違う。
チェーン店や都会の雀荘では、聞こえる音といえば、
メンバーの挨拶や、ドリンクオーダーの声、あとはゲームラストの掛け声やラス半コールくらいのものだろう。
しかし、片田舎の雀荘では、客同士はぺちゃくちゃおしゃべりしているし、
牌を叩き潰そうとでもしているのかというくらいに強打する人もいる。
1や2の対局マナーを当たり前と思っている人からすれば、
耐え難いマナ悪客たちに違いない。
が、堺市になじみ深い彼らからしてみれば、むしろ、
- おしゃべりに答えない相手は愛想が悪いし、
- (特に危険牌を)強打しないのは、分かりづらくて気が悪い、
という言い分だ。
一理ありそうな主張にも思えるが、不慣れな人間からしてみれば、顰蹙するほかないだろう。
4.常連の多いお店のマナー
全国にチェーン展開している雀荘は、やはり人の多い地域に出店することが多く、
一見の客や、数か月に一度訪れる客を、キャッチすることで利益を上げているが、
一方で、個人経営の三人打ちのお店などは、ほとんどが常連で成り立っているといってもいい。
いわば、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるか、もしくはその穴を塞ぎにかかるか、という方法論の違いであるが、
常連の多い店舗だと、やはりマナーは悪化する傾向にある。
対局者がお互いに初見の人間であれば、やはり多少気を遣い合って、行儀よく麻雀をしようという気持ちにもなるが、
卓を囲む全員が、このフリー雀荘で何度も何度も顔を合わせた仲ならば、砕けた対応に致し方なしというべきか。
- 河は6枚切りではなく、一段目がどこまでも無限に伸び続け、
- 発声のないポンに始まり、ロンやカンの発声のない倒牌……。
- 挙句には、他家の打牌批判まで、平然と行われている。
メンバーもまた、常連の客には強く言いづらいもので、
「まぁ、多少は仕方ないか」と、内心諦めてすらいる。
が、もう一度言うが、彼らからすればこれがふつうで、
反対に、チェーン店での居心地は悪いという。
5.まとめ
さて、いまの話を少しまとめてみる。
そもそも、筆者に言わしてみれば、マナーだとエチケットだのを、口うるさくまくしたてるのはナンセンスだ。
対局者が不快な思いをしないように心がけるのは、やはり同じゲームをプレイする人間としては、当たり前の話であって、
その店舗に固有のルールがあるというのならば、それに従うべきだ。
あるいは、明文化されておらずとも、店の雰囲気、空気感が醸す無言の圧力には逆らわない方がいい。
郷に入っては郷に従え、という言葉のある通り、波風を立てないことが何よりのマナー・エチケットであると思う。
それが気に入らないのであれば、すぐさまにラス半コールをかけて、他の店へ移ればいい。
雀荘なんて、どこにでもいくらでもあるものなのだから。
とはいえ、訪れたことのない雀荘の扉を開いて、いきなり怒号の飛び交うような雰囲気を目の当たりにしてしまっては、
面食らってしまうのも事実。
かといって、雀荘検索サイトなどでも、店のルールや料金については記されているものの、
店舗の雰囲気などについては言及されていないのが現状……。
しかしこの、悪く言えば無秩序、よくいえば奔放な雰囲気というのも、存外悪くない。
ふだん打っている麻雀が窮屈に思い始めたなら、いちどは足を運んでみるのもいいかもしれない。